もういちど宙(そら)へ―沖縄美ら海水族館人工尾びれをつけたイルカフジの物語/岩貞 るみこ
- 2008/08/09(土) 02:28:16
![]() | もういちど宙(そら)へ―沖縄美ら海水族館人工尾びれをつけたイルカフジの物語 (2005/02) 岩貞 るみこ 詳細 |
動物モノ的感動とプロジェクトX的感動&興奮の合わせ技。
ちょうど先日「海獣の子供」の新刊も読んだばかりで、水族館のバックヤードや海棲哺乳類のことなど普段接することの少ない情報をとても興味深く読みました。広い意味で技術屋さんと呼べる、このプロジェクトに関わったメンバー達の試行錯誤や葛藤や興奮やプロジェクトを楽しんでいる様子や、ちょっとライターさんの文体が気にはなるんですが不要と思われる描写を脳内で削除して読めばそれはそれでw、情報として読者に提供すべき部分は判りやすく読みやすくまとめられていると思います。そして何より、根幹にある「フジを元気にしたい」っていうこの本に出てくるすべての人たちの気持はさくちを待っていた東大農学部動物医療センターの待合室って場所で読んでいただけにヒシヒシと。実話だからこんな言い方も変な気がしますが、なんかこう、イルカのイメージとしてはまったくステレオタイプ的ではないフジのキャラがまたすごく良い。読み終わった後で、沖縄へフジに会いに行きたくなっちゃいますね!素敵な1冊でした。
- 本
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としょかんライオン
- 2008/07/06(日) 00:07:48
![]() | としょかんライオン (海外秀作絵本 17) (2007/03) ミシェル・ヌードセン 詳細 |
最近話題なのかな?よく書名を見かける気がします。
本屋に平積みされていたので立ち読み。
本屋の店頭でちょっと泣きそうになりましたw
そのまま「としょかんへやってきたライオン」のお話として読むも良し、読み替えするも良し。私は子供の頃から図書館にお世話になっている本好きの端くれなのでそのままのお話として読んでも好きです。図書館にこんなライオンが居たら素敵だろうなー、子供の頃に会えてたらもっと素敵だったろうな、なんて思います。でもライオンが図書館に居場所を得られたのもメリーウェザー館長のような人が居たお陰。もしかしたらメリーウェザー女史が館長を勤めるこの図書館に来るまで、ライオンは幾つもの図書館で門前払いをくわされてたのかも?それともメリーウェザー館長のような人の居る図書館だからライオンはやってきたのかも?(作中にライオンが何処から来たのかを示唆するような絵があります)そしてメリーウェザー館長とライオンの関係のじんわりと沁みてくるようなその描かれ方にすっかりやられちめいました。
文中にライオンの行動は描かれていても心情は殆ど描かれていないのに、しっかりライオンの気持が読み手に伝わってきて感情移入してしまいます。優しい色合いの挿画も少し切なくて優しいこのお話にぴったり。読み終わった後、うちのちっちゃい虎とライオンに会いたくなってさっさと帰宅したことは言うまでもありません。
- 本
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まったりゆるゆる猫日記/小泉さよ
- 2008/04/29(火) 01:34:33
![]() | まったりゆるゆる猫日記 (2008/03) 小泉 さよ 詳細 |
ふんわりした優しいタッチのイラストが大好きな小泉さよさんの新刊猫本。ご自身の2頭の猫達との生活のイラストエッセイです。短毛(♂)長毛(♀)の組み合わせがうちと一緒なので、ついつい比べながら読んじゃいます。写真の本物のにゃんこ達の可愛さも好きですが、イラストは描いた人の猫への愛情がダイレクトに伝わってくる感じで好きです。ちょっとした線やちょっとした仕草の描写に「そうそう、猫ってこんな!」とか「おお、良く見てるな!」みたいな共感があるっていうのかな。どこから読んでもいいし、ちょっとつまみ読みしてやめてもいいし、最初はなんつーベタなタイトルかと思ったけどまさにタイトル通り「ゆるゆる」したい気分の時にちょっと開くのにぴったりな本です。とか言いつつ、私は一度開くと最初から最後まで読んじゃいます
- 本
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ねずみにそだてられたこねこ/ミリアム・ノートン文/ガース・ウィリアムズ絵
- 2008/04/29(火) 01:22:10
![]() | ねずみにそだてられたこねこ (2001/09) ガース ウィリアムズ、ミリアム ノートン 他 詳細 |
すっごく可愛い絵本!
あらすじはそのまんまタイトル通りです。
野ねずみのミグスさん一家の巣穴に迷い込んできた目も開いていない赤ちゃん猫を家族皆で立派なねずみとして育ててあげるお話。赤ちゃんとはいえ猫なのに「うちで育てよう」って一瞬の躊躇もなしに言ってのける鷹揚なお父さんネズミ、優しく見守るお母さんネズミ、一緒に生まれた兄弟のように何の偏見も持たずに遊びまわり、愛情を注ぐ兄弟ネズミたち。大らかで愛情にあふれるミグスさん一家はとっても魅力的だし、自分をねずみだと信じきって育っていく仔猫のミッキー(この名前w)がめっちゃ可愛い
ネズミは服とか着て擬人化されて描かれているのに猫はまんま猫なのが謎ではあるのですが、可愛いのに代わりはないのでまあ良しです
さて異種族の家族にはミッキーが自分は猫なんだと気付くXデーがやってくるのですが。ハラハラドキドキしてページをめくっていたら、「わ、こんな結末なんだ!」ってあまりのほのぼのとした愛らしさに本屋の店先でニヤついてしまいましたw
なんていうか、読んでると自分もすご〜く大らかな気持になれます。大きくなったミッキーの絵も一枚だけあるんですが、見た限りはメインクーンって感じかな?アメリカの作品に出てくる猫はメイタイプの子が多いですね。トムとジェリーのトムもメイって噂があるんだけど本当だろうか…。ねずみのおもちゃを抱きしめて眠るミッキーの絵が特にお気に入りの一枚。仔猫の時の目はちゃんとキツンブルーになってるし、作画のガースさんは猫好きと見ました。手元に置いておきたくなる一冊です。
- 本
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イルカの島/アーサー・C・クラーク著 小野田和子訳
- 2008/04/11(金) 21:35:56
![]() | イルカの島 (創元SF文庫) (1994/02) アーサー・C. クラーク 詳細 |
友人がレヴューをあげていたのに興味を惹かれて読んでみました。クラークは大昔に短編集を数冊読んだきりなので随分久しぶりです。この本を読み始めてすぐクラークが亡くなったので、その意味でも印象に残る一冊です。
とにかく圧倒的に「海」な一冊。海洋物が好きなので今までたくさん読んでいますが、この本の海の描写は別格というか別次元というか。件の友人が”神”とか言ってたけどwいやもうまさに。こんなに美しく描きだされた海を初めて読みました。それもこれもクラークがその海に魅せられてスリランカに移住しちゃったって位のダイビング好きで海の中まで知り尽くしているからこそと思いますが、ダイビングもする作家というより言葉を得たダイバーによって書かれたって印象かな。でも、経験したことのない私まで感覚を追体験できるような海での様々な出来事や、映画でも見るように風景が目の前に浮かび上がってくる描写力はクラークならではのものなのでしょう。ジュブナイルでもありストーリーや登場人物は極めてシンプルなので、煩わされずにここに描かれている海を思う存分堪能できます。昔グレートバリアリーフに行った時日焼けが嫌で泳がなかったのが今さら残念〜。
ジュブナイルってことで(?)判りやすくイルカ贔屓な内容になっているのをバランスとろうとしたのか途中でちょっとだけシャチの女の子・スノーウィーのエピソードが挿入されます。スノーウィーがベリベリキュートなので個人的にはその辺をもうちょっと膨らませて欲しかったな〜。そして読んでいてなぜか何回も「海獣の子供」を思い出しました。舞台や背景としての海ではなく、畏怖をもって海そのものを描こうとしている(と感じる)ところが似ていると思うのかな?
クラークってめっちゃ本読み心をくすぐる素敵なタイトルの作品が多いけどイマイチ作風が私好みじゃないのよねと思っておりましたが、今回で少し認識が変わったので「軌道エレベータネタ+素敵タイトル」がツボにハマったままになっていた「楽園の泉」に挑戦してみようと思います。
- 本
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クリスマスの猫/ロバート・ウェストール
- 2008/02/28(木) 22:59:09
![]() | クリスマスの猫 (1994/10) ジョン ロレンス、ロバート ウェストール 他 詳細 |
表紙のイメージ画像がなくて残念
時季はずれなタイトルの作品ですが、「猫の帰還」がとても良かったので追っかけて読んでるウェストールの第二弾。
すぐに読めてしまう小品。
「クリスマスの猫」ってタイトルですが、猫はあまり出てきません。でも登場人物達を結びつける要の役割をになってます。舞台となっている街ノース・シールズはウェストールの故郷とのことで街の風景や人々が活写され、1934年当時のイギリスの風俗や階級制・それぞれの階級に属する人々の暮らしぶりがあくまで背景として物語の妨げにはならずに、けれどくっきりと描き出されていて興味深く読みました。ストーリー的には王道な子供向けって感じで捻りやどんでん返しはありませんが、関わった人達の人生を明るく導いたクリスマスのささやかな奇跡にじんとします。こんなお話が書かれているのを読むと、やっぱり欧米人にはクリスマスって特別なんだな〜って思いますね。
登場人物達もいいです。正義感と気が強くてへこたれない颯爽とした主人公・11才のキャロラインやたくましい精神と機転の持ち主・12才のボビー、大らかで優しいボビーのお祖母さん。ふてぶてしい家政婦にいいようにあしらわれる気弱なダメ男として描かれるキャロラインの叔父さんサイモン牧師の豊かで繊細な感受性はとても素敵。それだけでも憎めないし、クリスマスの奇跡も彼の感受性の賜物だし。
ボビーの属する労働者階級が陥っている不況と失業、貧しさなどウェストールらしい描写も随所にありますが、「猫の帰還」でもそうであったように文章からは悲哀を感じません(読者側からの感情移入は別にして)。むしろ、そこを乗り越えていこうとする逞しさや明るさのようなものを感じます。
そしてちょっとびっくりのエピローグが良かった!
読み終わった後、冬を抜けて春に辿りついたような気がしました。クリスマス限定とは言わないけど、やっぱり春や夏に読むより冬に読むのがいいかもしれません。
- 本
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きょうはこの本読みたいな/だれかを好きになった日に読む本
- 2008/02/23(土) 00:00:40
![]() | だれかを好きになった日に読む本 (きょうはこの本読みたいな) (1990/06) 現代児童文学研究会 詳細 |
児童文学を読もう年間はとっくに挫折しまして、これはそれとは別に色んなところで「トラウマになった本」としてあげられていたので借りてみました。トラウマとされているのは最後の2編、以前一度レヴューしたことのある那須正幹/「The End of The World」と川島誠/「電話がなっている」。私の目当ては未読の「電話がなっている」の方。一般的にトラウマ部分とされているオチはぶっちゃけありがち。
大人だから思うんじゃなくて子供の頃に読んでてもとっくに諸星大二郎とかで同じ系列のもっと強烈なの読んでたし、強烈さにかけては漫画だけどデビルマンとかのがよっぽど凄まじいからこの程度のオチは普通にスルーでしょう。でもこの本て活字の大きさとルビの状況を見る限り小学校低・中学年ターゲットと思われるんですが…確かに読ませちゃいかんですな、この作品。特に男子。いやもうなんて言えばいいのか、大人の女のワタクシが読んでもドン退きましたよ見事に。川島誠コワー。でもなんとなく、これって作者の女性像なんじゃないかって気がしました。奔放でミステリアス、繊細で高潔な美しさを持ちながらも生々しく肉感的で理解不能。作中では表向き「楽な生活を楽しみたい弱い人間だから」だとされている「ぼく」が彼女を裏切ったことの真実の理由を思うとなんだか切ないです。2人の感情のギャップがそのまま男である作者自身と彼の思う”女”との埋めがたいギャップを比喩しているような気がします。でもこれをさー、小学生男子に読ませるのはどうなのか。どうなんだ。いかんのではないのか。この話のオチがトラウマになったって言ってる人は、多分トラウマ部分とオチの判りやすいショッキングさがごっちゃになってるんじゃないかな。と思いますた。
「The End of The World」はやっぱりラストシーンが好きです。全然違うかもだけどちょっとブラッドべリの「太陽の黄金の林檎」に似た読後感があるかな。太陽が冷えてしまったために人類滅亡が目前に迫る中、2,000本のレモネードと1,000本のビールを宇宙船に積んで、詩を口ずさみながら太陽の残り火を掬いに行く話。「The End of The World」をなんの救いもない絶望だけの話とする解釈もあるようですが、私は希望の物語、あるいは希望に向かうことをやめない人間の意志の物語だと思います…っていうかやっぱ間違ってるかも。まあいいんですよ、物語の解釈なんて人それぞれで!作者の意図と違ってたって構うもんかー。ってなわけで、他収録作と併せてなんだか不思議な本でした。
- 本
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幻想と怪奇 おれの夢の女
- 2008/02/21(木) 00:45:13
![]() | 幻想と怪奇 おれの夢の女 (ハヤカワ文庫NV) (2005/04/21) 仁賀 克雄 詳細 |
1冊読み終わったので、順送りで読み終わった1冊。
「幻想と怪奇」は3巻シリーズでこれは2巻にあたります。
とても古典的な感じの古き良きホラーって感じのアンソロジーですね。怪奇よりは幻想寄りかな。13編も入ってるのに面白く読める作品が多くてコスパが良い。収録数が多いので、特に気に入った作品のみ感想。
冒頭のフレデリック・ブラウン「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はなんか主人公の設定だけでシリーズ物かけちゃいそうなのに惜しげもなくw使い捨て。霧深いドイツの田舎町の夜の描写がいいです。このワインバー、私も行ってみたい。「もう1人の子供」はどこかで読んだような懐かしさを感じる物語だけど、切なく温かい余韻が好き。同じく純愛を扱った「こころ変わり」は全体的なイメージは硬質で綺麗で好きだけど、ちょっとオチが気に入りませんな。でも「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」と一緒でこのオチじゃないといかんのだよね。「海への悲しい道」は読んでる読者まで悲しくなりますね〜。読んでいると「白」のイメージが強く残って、それが荒涼感を際立たせている気がします。あまり幻想でも怪奇でもないけど印象的な作品でした。「特殊才能」と表題作「おれの夢の女」はこの作品集の中ではかなり怪奇寄り。「特殊才能」はもうちょっと訳がどうにかだったらもうちょっと怖くなったんじゃとか。「おれの夢の女」はオチは読めちゃうけど全編の緊張感がいいです。「エステルはどこ?」は持ってる短編集「どんがらどん」にも入ってる(「クイーン・エステルおうちはどこさ?」)けど訳者が違うので読み比べ。ディテールでは「どんがらどん」の浅倉久志の訳の方が通じやすいところもあるけど、全体ではこっちの方がいいです。原文を読んでないからどっちがより忠実かは判らないけど。しかしデイヴィッドスンは何を書いても独特の雰囲気があって、楽しい法螺話って感じだよな。
収録作は1950〜60年代の作品ばかりなので古典的っていうかやはり少々古びている印象は否めませんが、そう思うと綺堂の怪談てすごいなあ。今読んでもクールだしめっちゃ怖いもんなあ。
- 本
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狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇 [異色作家短篇集]
- 2008/02/15(金) 20:49:44
![]() | 狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇 [異色作家短篇集] (異色作家短篇集 18 アンソロジー アメリカ編) (2007/01/31) フリッツ・ライバー、ジャック・リッチー 他 詳細 |
このサムネイル、色が全然違うwってことですんごい久しぶりに猫本じゃない本の感想。
一応猫じゃない本も読んでるんですが、お風呂入ったりトイレ入ったり(えー)する時に手近にある本を持ってって読むんで、数冊併読してるからなかなか1冊読み終わらない…。早川の昔っからあるシリーズの新装復刻本ですね。でもこの「狼の一族」って昔のシリーズにはなかった気がする。と思ったら、この巻は中身を総入替えしたらしいです。それって復刻?まあなんにせよ目次にならんでる面子だけでも読み(買うには高い/面子のせいではなくこの厚さで\2,000はいかがなものかと)でしょう。ってことで。
割と古典的でオーソドックスな感じの話からシュールな不条理系までバラエティ豊かですね。その分玉石混交な感じもするけどまあまあ。お目当てはもちろんアヴラム・デイヴィッドスンとディッシュでしたが、自分的に意外な収穫だったのがとラファティと本邦初紹介らしいジーン・シェパード。ラファティは昼休みに会社で読みながらニヤニヤしちゃいました。大昔に「九百人のお祖母さん」、「次の岩につづく」、「どろぼう熊の惑星」は読んでるんだけど、なんかぴんとこなかったんだよな〜。当時は子供だったから不条理の可笑しさが理解できなかったんですな。っていうか、翻訳難しいよねえ、きっと。筒井をそのまま他言語に移植してどこまで面白さが通じるのかなーって思うもんな、普通に。ジーン・シェパードは本職の職業作家ではないらしいけど文章(翻訳だけど)も内容も読後の余韻も良かった。あとは寡聞にして知らなかったスラディックの「他の惑星にも死は存在するのか?」(なにかと印象似てるんだけどなんだろう)と「なんでこんな話書いたんだ?」としか言えない、めっさ緩い「象が列車に体当たり」が良し。デイヴィッドスンは相変わらず不思議なイメージに幻惑される感じが好き。まさに法螺話っていうか。ケムに巻かれるっていうか。すっきりと端正にまとまった表題作も良かったです。読後感はなんかイヤンだけど…。
さほど奇妙な味とも言えない話や「?」な話も多いですが、これだけ楽しませてもらえれば短編集としてはいいかな。
- 本
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猫の帰還/ロバート・ウェストール
- 2008/02/15(金) 19:48:40
![]() | 猫の帰還 (1998/09) ロバート ウェストール 詳細 |
ネビル・シュートの「パイド・パイパー」と重なる時代のお話。ロード・ムービーならぬロード・ノベルなところも一緒ですね。あちらはナチス進攻下のフランスからイギリスへ帰る旅でしたが、こちらはイギリス国内での旅。猫のロード・ゴートが任務に合わせて各地を転々とする空軍パイロットのご主人を追って旅をします。ロード・ムービーっていうと旅を通して主人公が変化していくことが多いですが、このお話では主役猫のロード・ゴートは泰然自若として常に変わらず、彼女と出会った人間達が変化させられていきます。毎日が同じ繰り返しの閉塞された生活の殻を破られた老人、戦争で大切な人を失って自らも死んだように生きていた女性、生死を司る猫としてロード・ゴートの一挙手一投足に大騒ぎをする迷信深い飛行機乗り達などなど。でもロード・ゴートは彼らに何かを働きかけるわけではなく、どんな時も不屈にしなやかに変わらずにそこに居るだけ。彼女はきっかけではあっても、自らを変えていくのは常に登場人物達自身です。全編に戦争が陰を落としているので戦時下の厳しい生活が描かれてはいますが、不思議と陰鬱さや悲壮さは感じませんでした。印象に残るのは、戦火を潜り抜けてこれからも生活を営み続けて行く市井の人たちの姿です。徳間書店から児童書のシリーズとして出された1冊ですが、原文に拠るものか翻訳に拠るものか幾分文章が易しく書かれている他はまったく「子供向け」を感じませんでした。普通に大人の小説だと思うけど、何をもってこれが児童書に分類されてるんだろう??逆にこれが本当に児童書と意図して書かれたのであればちょっとスゴイ。それにしても最後までハラハラドキドキさせられました…特に最後のくだりはちょっと心臓に悪かった、ドキドキ。でもこんなに強かに逞しいロード・ゴートも「飼い猫」である以上、運命は人間の手の中ってことなんですかね。
”大切な人”を追って旅するロード・ゴートには「うちの子達もおっかけてきてくれるかな〜」とか思ってみたり、でもロード・ゴートが食べ物と水と暖かい寝床を提供されると”大切な人”が二の次になっちゃったり、そもそも”大切な人”を追って旅を始めたのも「その人の傍が一番自分にとって居心地がいいから」だったりして、微妙に複雑な気分にはなります(苦笑)。でもすごくさりげないんだけど猫の生態をとてもよく理解している(ただ猫と暮らしているだけじゃなくて積極的に勉強しないと判らないような)描写が多くてちょっと驚きました。プロフィールにはないけど、猫と暮らしたことのある方なのかな?
ところで西洋では黒猫って不吉と思われているイメージがあったのでロード・ゴートが「幸運の黒猫」って扱われてるのが意外。英国だけ?
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![狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇 [異色作家短篇集] (異色作家短篇集 18 アンソロジー アメリカ編)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/21Y34C%2Bv2LL.jpg)
